文教ガーデン撤退 臨時会で予算案否決―伊豆市議会

伊豆日日版 2017年05月17日

文教ガーデン関連の補正予算を賛成少数で否決した市議会臨時会の採決=伊豆市役所
文教ガーデン関連の補正予算を賛成少数で否決した市議会臨時会の採決=伊豆市役所

 伊豆市議会は16日、新市街地開発計画「文教ガーデンシティ」事業に関連する約8億1800万円の補正予算を審議する臨時会を前日に引き続き開き、採決の結果、賛成少数で否決した。合併特例債期限などの関係から「ラストチャンス」と位置付けて臨んだ菊地豊市長は結果を受け、「この事業から撤退する」と改めて表明。新中学校を核にこども園、公園、防災施設などを一体整備する市長“肝いり”の事業は、具体的な協議開始から3年で白紙撤回が決まった。

 採決は賛成7人、反対8人。15日の委員会採決から議長が抜け、委員長2人は賛成、反対に分かれた。

 採決前の討論は13人が登壇した。反対議員は「100億円を超える事業の投資効果があると思えない。住宅地が病院候補地となり基本コンセプトを失った」「砂ぼこり対策をすると決めたが、風速も計測していない。こども園はあの場所が適正か」などと発言。教科ごとに専用教室を設ける「教科教室型」についても「まだ伊豆市には早い」「手先の見直しを示しただけ。教育の議論を深めるべきだ」「もっと調査、研究が必要」などの意見が出た。

 賛成議員は「新中学校は多くの保護者が希望している」「将来を担う子どもたちへの投資。防災機能も早急に整備すべきだ」「第2次総合計画の重要施策。必要な物を最も少ない負担で整備できる」「実施しないと子育て世代の市外への流出が加速する」などと述べた。

 否決されたことを受け、政治団体・クローバー伊豆の土屋通夫代表(70)=青羽根=は「文教ガーデンは住宅地がなくなり破たんしていた。全国的に人口減少や少子化が進む中、学校再編やこども園建設などを見直し、市が発展する事業を進めてほしい」、3月に「文教ガーデン推進デモ」を行った鈴木裕也さん(40)=上船原=は「残念。もっと早い時期から全市的に盛り上げるようにできれば良かった。これで終わりではないので、具体的には分からないが、前に向かって進みたい」と述べた。

 【写説】文教ガーデン関連の補正予算を賛成少数で否決した市議会臨時会の採決=伊豆市役所

 ■菊地市長「私の不徳、洞察力不足」

 菊地豊市長は終了後の記者会見で「正直がっかりした。未来に向け市民のために、新市建設のためにと、自信を持って始めた事業。大変落胆している」と話した。

 否決された要因については「私の不徳と、洞察力不足のいたすところと反省している。教科教室型が、本体を脅かす事態になるとは予期できなかった」と分析。「本体構想の議論が深まらなかった」と加えた。

 影響については「保護者の約6割が(アンケートで)賛成し、それ以上に建設を望む声があったと思う。その人たちがどのように判断するか」と市外への流出を心配した。今後については「まずは病院、こども園を優先順位に取り組みたい。病院は市外に行ってほしくないが、市の土地がない。速やかに厚生連に連絡して話し合いたい」と述べた。中学校については「保護者の希望を聞き、どのようなセカンドベストがあるか考えたい」と述べ、統合の抜本的見直しも含めた教育委員会の議論を求めた。

 自らの進退については「私だけが辞めても前に進まない。市長と議会の価値基準が分かれていることを市民は不安に感じている。どのような手段で整合を取っていくか、広く市民の声を聞きたい」と話した。

 ■解説 埋まらなかった溝 市長と議員「立ち止まって」に温度差

 「一度、立ち止まって考えましょう」。伊豆市議会3月定例会で一般会計予算案が廃案となり、文教ガーデンシティ事業関連を除いた修正案を可決した際、菊地豊市長と議会が交わした“約束”だった。しかし「立ち止まって」に対する市長と議員の認識に“温度差”があり、約1カ月半後に開かれた臨時会でも双方の溝は埋まらなかった。

 この1カ月半の間、議会全員協議会が再三開かれた。統合が焦点となっている天城、中伊豆、修善寺の3中学校の現状も視察。中伊豆温泉病院の関係者が直接説明する機会もあった。保護者を対象に実施したアンケート調査で、約6割が新中学校建設に賛成という結果も示された。

 しかし、議員側の「立ち止まって」には、計画の変更に伴う協議が含まれていた。市側は「市民に対する説明不足」という指摘もあったことから、これまでの計画をより丁寧に説明したが、議会側が望んだ大幅な計画変更はなかった。アンケート結果についても「設問が恣意(しい)的」「回収率が半数以下」「賛成6割では市民の合意が得られたとは言えない」などの厳しい意見が出た。

 臨時議会では、菊地市長と西井伸美教育長が、議員の反対が多い「教科教室型」について「開校時の新3年生については受験などを考慮し、国語と数学を教科教室型にしないことも検討する」など柔軟に対応する姿勢を示した。これを受け、3月議会で反対した杉山武司議員は賛成に回った。15日の委員会で「開校から3年間は普通教室型にできないか」と質問し、「本日の時点では反対」と翻意の可能性も示唆していた小長谷朗夫議員は、最終的な採決で反対。「気持ちを変えるほど大きな修正は得られなかった」と述べた。

 「魅力ある新中学校の整備」「子育て支援体制の充実による若者世代の定住促進」「防災拠点機能としての活用」を目的にした文教ガーデンシティ事業は、2014年に設置された市建設戦略検討委員会で具体的な協議が始まった。保護者や地権者との話し合い、市民説明会なども開きながら、15年8月から3回開いた基本計画検討会議で基本構想を決定。16年度の一般会計に関連予算が計上され、議会で可決された。

 菊地市長は16年4月の市長選で文教ガーデンを公約に掲げ、3選を果たした。しかし、相手候補と大差がつくことが予想された選挙戦のため盛り上がりに欠けた。菊地市長は文教に関する説明不足が指摘された際、「選挙が事業をアピールする絶好の場だったのだが」と、少し悔しそうに振り返った。

 半年後の市議選では、新人候補が7人当選し、議会構成が大幅に変わった。12月定例会では、天城支所移転に関する議案を否決。同議案は今年の3月議会で可決されたものの、市長と議会の“対立構造”が浮き彫りになった。文教に反対した8人のうち、3人は新議員だった。

 ■どうする中学校の今後

 文教ガーデンは白紙になったが、今後の中学校をどうするかという課題は残った。市は説明の中で、現在は2クラスずつある天城、中伊豆中が12年後には全学年1クラスになるという推計を示した。現在の校舎は中伊豆中が築54年、天城中が築46年。修善寺中は築33年ながら10年以内には長寿命化工事が必要な状況と説明された。

 文教ガーデンの対立が表面化して以降、子育て世代が自ら座談会を開くなど新しい動きも出てきた。市と議会は今まで以上に市民の声を聞き、校舎の建て替えや小中一貫校の建設、新たな場所での中学統合など、最善策を目指して協議を重ねることが求められる。

 (小川勝之記者)

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