伊豆の低山を歩く ジオてくの楽しみ49=浅間山・稲取高原(東伊豆町)

2019年06月07日

1.「この辺りに数年前までクロワッサン形火山弾があった。崩れ埋まった?」と山田昌彦さん=稲取保育園下のジオサイト
1.「この辺りに数年前までクロワッサン形火山弾があった。崩れ埋まった?」と山田昌彦さん=稲取保育園下のジオサイト
2.浅間山山頂からは大海原、天城山系などほぼ360度の絶景が楽しめる。地球の丸さも確認
2.浅間山山頂からは大海原、天城山系などほぼ360度の絶景が楽しめる。地球の丸さも確認
3.浅間山の山頂下には巨岩が鎮座し、祠が安置される。富士信仰の山とみられ、ここは天城火山の痕跡という
3.浅間山の山頂下には巨岩が鎮座し、祠が安置される。富士信仰の山とみられ、ここは天城火山の痕跡という
4.回転しながら飛び、クロワッサン形になった火山弾(数年前、山田昌彦さん撮影)
4.回転しながら飛び、クロワッサン形になった火山弾(数年前、山田昌彦さん撮影)
5.築城石の矢穴を確認する黒川さん。「昔、観光利用で大川から運んだようだが計画が頓挫し置きっぱなし」という。町立体育センター近く
5.築城石の矢穴を確認する黒川さん。「昔、観光利用で大川から運んだようだが計画が頓挫し置きっぱなし」という。町立体育センター近く
登山ルート図
登山ルート図
登山データ表
登山データ表

 ■山と人々=姿消したクロワッサン形火山弾 なぜ?こんなところに築城石

 東伊豆町稲取と白田境の浅間山は富士信仰の山とみられるが、同町文化財保護審議会長の黒川俊広さん(71)は「地元に文献など資料がない」。また富士山信仰について研究している奈良教育大の非常勤講師・荻野裕子さん(51)=京都府=は「富士信仰の山の可能性は高いが、確認できていない」。

 黒川さんは「昔、おばあさんたちは尾根伝いに歩いてお参りに行った。稲取の町場からだと片道2時間ぐらいかかった」。細野高原の下方の集落、同町入谷の山田泰彦さん(87)は「今から80年ほど前、子どもの頃におばあさんが近所のお年寄りらとお参りに行ったのを覚えている」と記憶をたどった。

 荻野さんによれば伊豆には九つの小型富士(浅間山)があり、稲取・白田境の浅間山はこれに含めてなく、他に比べ大きく高い。稲取八幡神社の宮司・稲岡孝宣さん(55)は「富士山信仰というより火山信仰の山ではないか」との見方をする。

 クロスカントリーコース方面に登る急な車道の左右にこんもりした山があり、これが稲取スコリア丘(ふれあいの森)で、JA伊豆太陽ワイナリー一帯が稲取火山の噴火口。その先の稲取保育園方面への分岐右奥にクロワッサン形火山弾(最大長約30センチ)やスコリア丘断面を確認できるジオサイトがある。伊豆半島ジオパークの生みの親、小山真人・静岡大教授は同構想指針書の中で火山弾や稲取スコリア丘のジオパーク的価値を「AA」、整備優先度を「◎」の最高ランクに位置付けた。

 だが一帯には解説板もなく、草ぼうぼうで中に入れず見学できない。元高校教師の山田昌彦さん(81)と草刈りしながら確認すると、スコリア断面は一部崩れクロワッサン形火山弾は姿を消していた。「数年前にはあった。崩れて埋まったか」と山田さんは肩を落とした。

 その下の空き地奥に築城石が無造作に置いてある。稲取江戸築城石保存会長でもある黒川さんは「30年ほど前、町が築城石の小公園のようなものを造ろうとしたが頓挫[とんざ]。大川から持って来たようで、大名の刻印はないが、矢穴は確認できる。あった場所に戻すべき。貴重な文化財で問題だ」と指摘した。

 伊豆アニマルキングダム付近は以前、平らなカヤ原。山田さんは「昔、入谷(稲取)と白田は境界争いでここでよくけんかし、けんか場の別名がある」、稲岡さんは「白田に残る江戸時代の古文書に両地のけんかでけが人が出たことが記される」と教えてくれた。

 ■登山記=気軽に行ける絶景地 山頂下の巨岩脇に祠

 浅間山や稲取高原一帯は、気軽に山歩きが楽しめる素晴らしい地。長距離を歩くのが苦手の人は山頂近くまで車で行け、簡単に行けるにもかかわらず息をのむ絶景が待っている。子どもも歩ける家族向きコースだ。

 ススキで有名になった細野高原の東隣の峰。国道135号の稲取高や伊豆アニマルキングダム入り口から山側に入り、車で5分ほどのクロスカントリーコースの駐車場に車を止めた。JA伊豆太陽みかんワイナリー下の駐車場でもOK。まず町営風力発電所の近くの浅間山山頂を目指した。

 アニマルキングダム方面には直進せず、稲取保育園方面に分岐し、すぐ右手に稲取スコリア丘のジオサイト、その先の登山道を登れば山頂付近に元稲取村の村長で稲取の発展に貢献した田村又吉翁の「植林の碑」(明治中期建立)がある。町内の文化財などに詳しい黒川さんによれば「草原だった山を魚付き林にするため松などを植えた」という。そのまま下ればワイナリー下の駐車場近くに出るが、今回は来た道を戻る。

 田村翁の碑に寄り道しない人は直進し、保育園先を左折して急な車道をしばらく上がれば町営風力発電所。最後の大きなカーブを右手の林に入ると、わずかで2等三角点「白田村」がある。ここも寄らない人は直進、風車手前の右手奥にあずまやがあり、この付近では時々、愛好家がラジコングライダーなどを滑空させている。

 その先、左手に蠣殻[かきがら]を浄化に使うトイレがあり、上の展望台からは伊豆七島や爪木崎、大室山方面が見渡せる。3基の風車前を通り、少し登ると巨岩が並ぶ浅間山の祠[ほこら]だ。一帯は天城火山の痕跡で、厳かなたたずまいがある。わずかで山頂、ここからの景色が素晴らしい。

 奥にも祠があり、コンクリート階段を下って左に進み、車道を下ると稲取ゴルフクラブやアニマルキングダム方面に出られる。時間に余裕があれば稲取ふれあいの森の外周を歩き、途中にある展望台から稲取岬などの絶景が楽しめる。さらに進むとクロスカントリーコースやツリーハウス・芝生広場などに合流、一周できる(一部道路工事中のため周遊できないケースもあるが、車道を通り周遊可能)。ふれあいの森も遊歩道が整備され、歩くことも可能だ。

 ■ジオ解説=稲取火山の噴火口 両側に二つのスコリア丘―ワイナリー付近

 稲取港から伊豆急の線路と並んで海沿いに進む道を1キロほど北東方向に行くと、磯釣りをする人にはよく知られた黒根岬という小さな岬がある。赤黒いごつごつとした表面にはさまざまな海岸植物も見られ、切り立った崖に囲まれた姿はまるで小さな城ケ崎海岸(伊東市)のようだ。

 城ケ崎海岸は約4千年前の大室山の溶岩流でできた海岸だが、黒根岬は約1万9千年前の稲取火山の噴火で流れ出した溶岩でできた岬である。この頃は地球全体が寒かった氷河期で、海面の高さが今よりずっと低かった。現在見えている黒根岬は溶岩が海に向かって流れ下る途中の部分を見ていることになる。

 稲取火山という火山はどこにあるのだろうか。稲取高校付近から伊豆アニマルキングダムへ向かう道を登っていくと、JA伊豆太陽のみかんワイナリー手前付近などでは道の左右が山に囲まれた道を進むことになる。この付近が稲取火山の火口そのもので、道の左右に見える山は火口から噴き出したスコリアが堆積してできたスコリア丘なのだ。

 この火山は大室山と同じく、約15万年前から小さな火山をあちこちに造ってきた伊豆東部火山群の火口の一つである。火口の真ん中を道路で横断できるのは、同火山群の中で林道を除けばこの場所と、伊東市の梅木平火山くらいだ。稲取火山を抜け体育センターの先を右に曲がり山道を登っていくと東伊豆町の風車に出る。風車のある場所や、そこから徒歩で登っていった浅間山、その間を結ぶ尾根は20万年ほど前に噴火を終えた天城火山の一部。

 これらの場所からは稲取火山や大室山などの伊豆東部火山群の火口、天城火山の溶岩流でできた稲取岬、遠方には伊豆が海底火山だったころの地層からなる須崎半島など、伊豆の大地成り立ちが一望できる。

(伊豆半島ジオパーク推進協議会専任研究員・鈴木雄介)

 【写説】「この辺りに数年前までクロワッサン形火山弾があった。崩れ埋まった?」と山田昌彦さん=稲取保育園下のジオサイト

 【写説】浅間山山頂からは大海原、天城山系などほぼ360度の絶景が楽しめる。地球の丸さも確認

 【写説】浅間山の山頂下には巨岩が鎮座し、祠が安置される。富士信仰の山とみられ、ここは天城火山の痕跡という

 【写説】回転しながら飛び、クロワッサン形になった火山弾(数年前、山田昌彦さん撮影)

 【写説】築城石の矢穴を確認する黒川さん。「昔、観光利用で大川から運んだようだが計画が頓挫し置きっぱなし」という。町立体育センター近く

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