熱視線=伊豆のメガソーラー まとめ(5・完)世界ジオへの影響懸念

2018年05月30日

山頂の山林を伐採するなどして建設中のメガソーラー。山の裏側に、これより規模の大きい施設があり、2カ所で一つの施設となっている=河津町川津筏場の天子平
山頂の山林を伐採するなどして建設中のメガソーラー。山の裏側に、これより規模の大きい施設があり、2カ所で一つの施設となっている=河津町川津筏場の天子平
ハードルが低い50キロワット未満、同じ場所で大量に申請された例(FIT法認可資料から)
ハードルが低い50キロワット未満、同じ場所で大量に申請された例(FIT法認可資料から)

 ■制度的な問題多し 県「早急に対応へ」

 「マスコミは反対者の意見ばかり取り上げるが、みなが反対というわけではない。建設場所の問題はあるにしても原発を造るわけではないし、反対ばかりしていると伊豆はますます疲弊する」(ある下田市民)、対し「伊豆のメガソーラーの多くは森林を伐採して建設する。パネルを敷き詰め景観を損ね、『伊豆の自然』という世界に誇れる財産が失われる。災害も心配だ」(ある伊東市民)。加えて、さきごろ世界認定を受けた伊豆半島ジオパークへの影響を懸念する声もある。(文、写真 森野宏尚)

 再生可能エネルギーのうちメガソーラーなど太陽光発電施設は、FIT法(2012年開始、固定価格買い取り制度)ができて急激に増加、その歴史は浅く問題も多い。伊豆半島ではほとんどが山林への建設で、樹木の伐採や造成を伴い、生態系などの自然環境、災害などの生活環境、また景観を脅かしかねない。

 だが、ある市町役場職員は、現状をこう話す。「事業者には法令順守で適材適所で事業を行ってもらいたい。それを阻止することはできない」。

 県が県内35市町村に対して行ったアンケート調査でも指摘されたが、太陽光発電は制度的な問題が多く、国と県や市町のパイプがよくない。「許認可の申請業者と実際の施工業者、完成後の運営業者が違ったり、転売でコロコロと業者が変わったりで実態が不明確」(地元や役所職員)。県エネルギー政策課の黒田健嗣課長(53)は「国が直接認可しているので、県や市町を通らずよく分からないことが多い。大きな問題だ」と指摘する。

 その弊害も出ている。賀茂郡では町内でメガソーラーが稼働しているにもかかわらず、町が事業内容を把握していないケースもあった。

 アンケートではFIT法に関し「地方自治体等への情報提供が必要。(現状では)太陽光発電施設の設置を把握する仕組みがない」「設備認定前に自治体との事前協議制度の導入など法整備の充実を望む」「事業終了(20年)後の設備処分は事業計画に計上することになっているが、事前に供託金として相当額を納入してもらい、撤去費用に充てる制度の創設を求める」などの意見もあった。

 県の環境影響評価(環境アセスメント)条例の規則で、太陽光は「工業団地の造成」と同じ区分で50ヘクタール以上が対象。これに対し、山梨県は15ヘクタール、長野県や神奈川県などは20ヘクタール以上のため、伊東市などは対象面積を引き下げるよう県に要望している。アンケートでも同様の意見が多くあった。

 県土地指導要綱で太陽光は対象外のため、対象に含めるべきが8割、県独自の太陽光適正導入ガイドラインを整備すべきも7割近くに上った。黒田エネルギー政策課長は「何らかの規制や基準が必要だ。特に森林に関しては環境アセスでの対応など具体策を示しながら市町と調整を図っていきたい」との考えを示した。

 ■小規模施設を分割申請 伊豆各地で横行か「投機対象」指摘の声

 規模の大きなメガソーラーとは別に、建設のハードルが低い発電出力50キロワット未満の施設を同一の土地に同じ事業者などが大量に申請する「分割申請」が伊豆半島でもみられる。合計すればメガソーラー規模になるものもあり、国は昨年春のFIT法の改正で、分割禁止を打ち出した。山林などの区画に太陽光発電という付加価値を付けて売ることで、投機の対象になっているケースもあるようだ。

 FIT法の認可を受けた事業を資源エネルギー庁の資料で見ると、伊豆でもほぼ全ての市町に「分割」を疑われる案件がある。中でも多いのは函南町、伊東市、下田市、熱海市などだ。発電出力が50キロワット以上になると電力会社と高圧連係の契約を結ぶ必要があり、高圧受電設備や保守料金、高圧発電所の設置協議費用などがかかるという。

 限りなく発電出力を50キロワットに近くし、同じ番地や隣接地番などに同じ事業者名で、また手の込んだ業者は事業者名や代表者名を変えて申請するケースも見られる。このため国は新たに一つの場所に複数の発電設備を設置しない―との認定基準、同一の地番、地権者が同一の一団の土地に他の認定事業計画がないこと―などの審査基準を設けた。

 ある市町では分割でFIT法の認可を取った案件を土地利用の申請段階で指摘し、一括の施設(中にはメガソーラーも含まれる)と見なして建設させた例もあるという。

 熱海市観光建設部まちづくり課の浪川和彦都市計画室長(52)は「資産価値がそれほどない山林などを太陽光発電設備の許可(FIT法)を取り、付加価値を付け土地の価格を引き上げて販売する業者もあるようだ」という。さらに「投機的な目的で取得しては売り、転売、転売となっているケースもあると聞く。このようなケースでは、災害の要因とも成りかねない荒れ放題の土地だけが最後に残ることもあり得る」と指摘した。

 ■「特に魅力とは思わない」 伊豆への相次ぐ進出に業者 

 自社開発や運営のメガソーラーが全国に45件(伊豆に3件)、計画中が18件(同2件)あるリニューアブル・ジャパン(東京)は、取材に「伊豆の稼働済みやFITの認定を受けた案件が、全国的に見て特に多いとは思わない」。また「伊豆がメガソーラーの建設地として特に魅力的という印象も持っていない」とコメントした。

 さらにFIT価格について「2012年度の40円プラス税(10キロワット~)から、18年度に18円プラス税(10キロワット~2000キロワット未満)まで半分以下に低下した。その都度、建設コストや資財コストの低減を進め現在に至っている。採算ラインの水準は不確定要素が多く判断が難しい」と話した。

 一般的に規模が大きくなるほど建設コストは下がると言われ、買い取り価格は「厳しくなっているが早めにFITの認可を取ったので、今建設しても何とかやっていける」との業者がいる一方、「まだ採算が取れる」と強気の声もある。

 ■規制条例の問題点と今後の展開

 2018(平成30)年6月1日より施行される「伊東市美しい景観等と太陽光発電設備設置事業との調和に関する条例」。私たち市民運動を続けてきた住民は、この条例で、今回問題となっている伊豆メガソーラーパークの建設を止められるか疑問を持っています。

 そもそも、この条例は「届出制」なので、決まった様式の書類に必要な情報を記載して担当課に提出をすれば手続きは終了、市長の不同意によって事業を認めないということができるかどうかは疑問です。

 本条例に付帯する規則に定められた15種類の抑制区域指定を重ね合わせると、伊東市全域が抑制区域となりますが、それとてただ市長の同意・不同意の認定対象となるというだけの話です。抑制区域だからといって事業を全て認めないということではありません。

 この条例では、「伊東市土地利用事業等の適正化に関する指導要綱」を16(平成28)年3月に改正して定めた厳しい太陽光発電施設の個別基準を結果的に緩めることにつながりました。それは市民にとっての損失です。今後は法律に照らして、今回の伊東市による宅造法での許可が、住民の安全・安心を担保するものであるかどうかを裁判で明らかにしていく予定です。

 現在、伊東市に対して宅造法の許可に対する不服審査請求を行っており、この結果が6月中旬までには出ると思われますので、次の段階として、事業者を被告にした民事訴訟で工事差止めの仮処分を申し立てます。同時に行政事件訴訟法に基づき、伊東市長が許可した宅造の許可処分の取り消し及び執行停止を求めて提訴します。

 また林地開発の許可が出される場合を視野に入れ、万一許可が出された場合に備えて県に対し、許可の取り消しと執行停止を提訴するべく同様の準備を進めています。

 私たち住民は正当防衛の手段として、「訴訟」を捉えています。そもそも地域住民の生命身体および財産の保全は法律によって守られるべきです。これからも住民を守る立場に立った行政の在り方を求めていきます。

 伊東メガソーラー建設の中止を求める会、伊豆高原メガソーラー訴訟を支援する会 代表 関川永子[せきかわながこ](50)伊東市富戸

 ■特別寄稿=ジオパークの視点で考える 自然との共生大切 

 ジオパークは大地の生んだ貴重な財産を保全した上で、それを活用しながら、豊かで持続可能な地域社会を築いていく仕組みである。しかしながら、保全対象となるのは、ジオパーク内の価値あるサイトとして指定された場所(ジオサイト)のみであり、ジオパーク内の全ての土地の保全義務があるわけではない。

 またジオパークは、世界遺産などと異なり、保全保護だけでなく活用も問われる場でもあるので、保全と活用とのバランスに細心の注意が払われている限り、発電施設をいちがいに排除することはできない。逆に、節度のある再生可能エネルギーの開発と利用がなされているなら、それは自然と共生する地域社会のひとつの姿であり、ジオパークのセールスポイントにもなり得るのである。

 ジオパークの理念から考えて看過できそうにないケースは、おそらく次の三つのいずれかが現実となった場合であろう。(1)保全対象そのもの、あるいは隣接地が開発され、価値が著しく損なわれる(2)開発の結果として得られる利益が地域を潤さない、つまり地域の自然が外部から一方的に搾取された状態になる(3)開発に対して、地域社会が真っ二つに割れて争う事態となる。

 伊豆半島は晴れてユネスコ世界ジオパークの一員となったが、審査は4年ごとに行われるため、次の審査は3年後に迫っている。深刻な事態が生じることのないよう、早急な問題解決と保全方策の決定がなされることを望む。

 ◆小山真人[こやままさと]◆ 地質学者、静岡大地域創造学環教授。東京大大学院博士課程修了(理学博士)。今年、世界認定された伊豆半島ジオパークの生みの親で、伊豆半島ジオパーク推進協議会顧問・学術部会長。静岡市在住、59歳

 ■特別寄稿=太陽光発電建設に対する環境アセスメントの課題

 再生可能エネルギー推進の国策により、伊豆半島でも風力発電所に引き続き太陽光発電所建設が急増している。本来、地球温暖化や大気汚染などの環境問題を防止するために導入されたはずのこれらの新しいエネルギー生産も、実際には物理空間における開発事業(森林伐採、自然立地の消失等)を伴い、その他の開発事業同様、環境に対してさまざまな悪影響を及ぼす。もしこれらの環境影響に配慮がなされなければ本末転倒である。

 開発事業の計画時における環境保全を担う制度の核心は環境アセスメント(環境影響評価)制度であるが、わが国では誕生から災難に見舞われ、いわば日本独自の手続きとして現在に至っている。国や自治体の環境影響評価制度には根本的課題がある。

 それは(1)ほとんどの市町村はそもそも制度を有していないこと(2)たとえ制度があってもそのスクリーニング(対象事業の選定プロセス)が特定の種類と規模に偏っているため、多くの環境に深刻な影響を及ぼすだろう開発計画が漏れていること。

 具体的には、希少で脆弱[ぜいじゃく]な生態系やハビタット(野生動植物の生息地)に直接、間接の影響を与えうる開発行為であれば、開発事業の規模の大小に限らず対象とする仕組みが不十分であること(その場合、貴重な場所としての地域指定、ゾーニングが必要となる)(3)スクリーニングの問題で、対象事業を特定行為だけ(ソーラー発電所の設置等)に限ることが可能なため、累積的な開発行為(例えば事前の森林伐採等)が同制度の対象にならないこと

 (4)自然環境やハビタットに及ぼす影響の定量評価が義務づけられておらず、それらの解決策としての環境保全措置(ミティゲーション)も実質的なものが提案されてこないこと(5)同制度が義務教育で教えられていないため、一般市民の認知度が極めて低いことなど課題は山積である。

 これらの制度的課題を全て解決するのには時間がかかる。実は環境アセスメント制度は、例えば「○○川流域協議会」のような住民、各種団体、企業、学校、行政等による地域コミュニティーの約束事として自分たちに見合った仕組み(自主アセス)として導入することも可能である。

 今年の8月20~22日、静岡市の静岡県立大で環境アセスメント学会主催「アジア環境アセスメント会議(AIC2018)」を開催し、この分野の情報交換をアジア諸国の専門家と行うことになっている。静岡県や伊豆半島の開発と保全の調和に少しでも貢献できたらと思っている。

 ◆田中章[たなかあきら]◆ 東京都市大環境学部環境創生学科教授。東京大大学院農学生命科学研究科博士課程修了(農学博士)。環境アセスメント学会常務理事。8月に静岡市で開催される「第12回アジア環境アセスメント会議in静岡」の実行委員長。神奈川県在住、59歳

 【写説】山頂の山林を伐採するなどして建設中のメガソーラー。山の裏側に、これより規模の大きい施設があり、2カ所で一つの施設となっている=河津町川津筏場の天子平

 【写説】ハードルが低い50キロワット未満、同じ場所で大量に申請された例(FIT法認可資料から)

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