華の誇り16=第3章・夢見て夢売る芸妓人生(3) 今どきの若者も花柳界に

2017年10月05日

鳴り物の師匠の話に聞き入る見習い芸妓・あげはさん=熱海芸妓見番歌舞練場
鳴り物の師匠の話に聞き入る見習い芸妓・あげはさん=熱海芸妓見番歌舞練場
お姐さんたちと談笑する新人のまめ六さん=伊豆の国市伊豆長岡見番
お姐さんたちと談笑する新人のまめ六さん=伊豆の国市伊豆長岡見番

 ■熱海・あげはさん 茶髪の18歳

 「3日前から稽古してるんですけど。筋肉痛がやばい」

 熱海の見習い芸妓[げいぎ]・あげはさん(18)は、今年3月に高校を卒業したばかり。茶髪に黒い肌の「ギャル」と言われる今どきの若者だ。4月から日本舞踊の稽古に取り組んでいる。

 ■師匠の指摘次々

 稽古中、花柳あらた師匠の指摘が次々飛ぶ。「『うん』と言ってはいけません」。「マニキュアは、私は芸がありませんと言っているようなものよ」

 若いあげはさんの物言いは率直だ。「花柳界は私と真逆の世界。何ひとつ面白くない。今すぐやめたい」

 ■「勘いい、努力次第」

 ところが半年後、稽古に励むあげはさんには、初々しさが増していた。芸の師匠たちは変わらず厳しいが進歩を認める。「まだ日本舞踊にはなっていません。ただ勘は悪くないし言われたことを守ろうとしている。努力次第です」(花柳あらた師匠)。「ああ見えてリズム感がいいし稽古も休まず出ている。伸びるよ真面目にやれば」(鳴り物・望月左之助師匠)。

 自分次第だと当人も分かっている。「私の人生。ギャルは今しかできないことだけど、芸妓もまずはやってみる。やってて損はないかな」。来年6月に見番で行われる踊りの試験合格を目指す。「受からないと何も始まらない」とあげはさんが言うこの試験に合格すると見習いは卒業となり、お座敷での披露が許される。

 奇抜な存在だが、あどけない表情からは素直さがにじみ出ている。「あの子はあの子で愛嬌[あいきょう]があるのよ。どう変わっていくのか楽しみね」。お姐[ねえ]さんたちも温かく見守る。あげはさんの他にも個性豊かな見習い芸妓が踊りや行儀作法の稽古に熱心に通う。さまざまな若者を受け入れ、育てる熱海見番の“芸妓学校”としての懐深さが垣間見える。

 ■長岡・まめ六さん 会社辞め芸妓に

 会社勤めをやめて芸妓になった若者もいる。伊豆長岡の新人・まめ六さんは笑顔が人懐こい20歳だ。

 ■長岡芸妓、世界に

 小学校1年生の時、祖母の踊りに「子どもながらに心打たれて」日本舞踊を始めた。今年2月、父親に連れられて舞台「伊豆あやめ座」を見たその日に、芸妓になることを決意した。「お姐さんたちの気持ちが伝わってきて感動した。長岡芸妓衆を世界中に知らしめたいと思った」

 お座敷に備えて実家から置屋に転居した。初めは反対した家族も、まめ六さんの熱意に負けて送り出してくれた。

 ■貴重な人材に重責

 まめ六さんを抱える置屋のおかみ・九美さんは重責を感じている。「会社をやめてまで来たまめ六をがっかりさせたくない」。かつてのように、実家や自身の家計を支える目的で芸妓になる時代ではない。自分で選び芸妓に面白みを見いだした貴重な人材を、花柳界は継承者として大切に育てなくてはならない。

 現在、見番では伊豆の国市「三養荘」で行う舞台「第2回 伊豆あやめ座」(10月24、25、31日開催)に向けて猛稽古中だ。10月は月の半分以上を稽古に費やす。会社勤めは到底できない。まめ六さんは安定した職を手放すことに不安はなかったのだろうか。

 「未練はないです。あの舞台に私も立ちたい」

 若い瞳は、やりたいことをやれる喜びに輝いている。(本社・平田春日記者)

 【写説】鳴り物の師匠の話に聞き入る見習い芸妓・あげはさん=熱海芸妓見番歌舞練場

 【写説】お姐さんたちと談笑する新人のまめ六さん=伊豆の国市伊豆長岡見番

各地の最新の写真
伊東
荒木田さん県連名表彰 伊東署地域安全推進員、防犯活動に尽力
下田
問題点見つけ対策を 災害時の初動確認―下田で賀茂指揮官会議 
中伊豆
「気軽に利用できる」 修善寺駅で衆院選期日前投票開始―伊豆
熱海
体育授業で詩舞練習 熱海高2年女子の37人

最新写真特集

伊豆のひろば投稿
伊豆パワースポットめぐり
伊豆新聞とイズハピが贈る伊豆の観光情報紙 伊豆のとっておきの春時間を満載(PDF)