伊豆の低山を歩く ジオてくの楽しみ33=シラヌタの池・シラヌタ大杉・お化け杉(東伊豆町)

2017年07月16日

樹齢千年以上と言われ、幹回りは9メートルあるシラヌタ大杉。威風堂々とし、伊豆最大級の老巨木だ
樹齢千年以上と言われ、幹回りは9メートルあるシラヌタ大杉。威風堂々とし、伊豆最大級の老巨木だ
幹回りは5・6メートルしかないが、枝ぶりが千手観音のように見えるお化け杉
幹回りは5・6メートルしかないが、枝ぶりが千手観音のように見えるお化け杉
水面の真上に産み付けられたモリアオガエルの卵塊。3年前を底に徐々に増えているという
水面の真上に産み付けられたモリアオガエルの卵塊。3年前を底に徐々に増えているという
シラヌタの池の奥にある巨木の森。ここに生えるスギは幹回りが7・35メートルあり、大きな木が林立する
シラヌタの池の奥にある巨木の森。ここに生えるスギは幹回りが7・35メートルあり、大きな木が林立する
お化け杉の近くにはミツマタが多く自生し、春には美しい花を咲かせる(富永真弘さん提供)
お化け杉の近くにはミツマタが多く自生し、春には美しい花を咲かせる(富永真弘さん提供)
登山データ表
登山データ表
登山ルート図
登山ルート図

 ■山と人々=圧巻の“巨木たち” 水抜け崩壊を懸念、導水の沼池調査を切望

 モリアオガエルの産卵地として知られる東伊豆町白田のシラヌタの池は、原生林の中にある周囲約200メートル、水深30センチ弱の神秘的な池だ。鹿やイノシシが体に付いたダニを取るため泥を体になすり付けた沼池で、奥地にある誰も知らない、ぬた場から名が付いたといわれる。漢字では「不知沼の池」。

 地滑りによって窪地[くぼち]を土砂がふさぎ誕生した。以前は文字通り水のたまった沼だったが、今は清流魚もすめそうな池となった。隣接する川久保川の源流からパイプで清流を引き入れているためだ。

 町教育委員会の森下泉太さん(38)は「先輩職員から伝わる話では地震(1978年の伊豆大島近海地震か)で湧水が止まり、沼が干上がるのを防ぐため町が導水するようにした。時期は不明」と説明。天城自然ガイドクラブの富永真弘さん(73)=同町奈良本=は「パイプによる導水は20年ほど前からと思うが、つり橋の下流側からは池の水が抜けており、このままではいつか池が崩壊するだろう」と懸念し、専門家による調査を切望する。

 昭和40年代初めにはモリアオガエルの卵が400個以上も生み付けられ、周囲の樹木を白く染めた。ところが「7、8年前には50~60個、3年前の30個ほどが最少で、ここ数年は増えている。ヤマカガシ5、6匹が卵塊に頭を突っ込み卵を食べるのを見た」と富永さん。水中ではイモリも待ち受ける。天敵が増えれば卵は減り、減れば増える―を繰り返している。

 シラヌタ大杉は幹回り9メートル、樹高45メートル、枝張りは25~30メートル。樹齢は推定千年以上とみられ、伊豆半島最大級の老巨木だ。裏側の他のスギを巻き込んだ樹形や下枝の太さは圧巻。林野庁の植物群落保護林、東伊豆町天然記念物に指定。富永さんは「伊豆市の太郎杉に関連付けて次郎杉と呼ぶ人もいるが、太郎杉は樹齢400年。人で言えば40歳を太郎、100歳を次郎というのはおかしい」とする。

 シラヌタの池周辺は生物相が県指定天然記念物のほか、林野庁の「シラヌタの池 モミ・スギ群落」(植物群落保護林)に指定。スギ、モミ、ケヤキ、カエデなどの巨木が自生し、最大級のスギは幹回り7・35メートルで、この森の幽玄な雰囲気に圧倒された。富永さんは「碁盤木[ごばんぎ]歩道を下ると平らな場所の下側に今は水がないが、第二のシラヌタの池のような所もある。赤色立体地図で確認すると窪地の存在がよく分かる」と太古の森を思わせる一帯の魅力を語った。

 ■登山記=天城最高峰の直下巡る 大きさより枝ぶり特徴、千手観音のような杉

 天城最高峰の万三郎岳[ばんさぶろうだけ](1405・3メートル)に近い石楠立[はなだて]―馬の背の南側直下にあるシラヌタの池やシラヌタ大杉、お化け杉は標高650~810メートル。比較的近くまで車で行け、東伊豆町白田の国道135号から白田川沿い右岸を上流へ。水力発電所のある堰口[せきぐち]橋を渡り山道を上がるが、道は狭く急峻[きゅうしゅん]だ。東伊豆町ホームページに詳細なルート紹介がある。

 伊豆半島でも1、2の高所にある別荘地・天城ハイランドはメーン道路を進み、ログハウス前を左へ、管理事務所前を右に折れて上り、下ったら住宅前を左に鋭角的に曲がれば奈良本林道。すぐ地蔵堂歩道の看板が左手に見え、近くに他車の通行の邪魔にならないよう車を止め、同歩道を歩き出す。

 この道は森林管理署の作業道で、ヒノキなどに塗られた赤ペンキを目印に進む。白ペンキは境界印。途中、赤ペンキが二股になるが、涸沢[かれさわ]沿いを直進する。一帯には和紙の原料ミツマタが多い。わずかでお化け杉が迎えてくれる。計測すると幹回り5・6メートル。シラヌタ大杉に大きく劣るが、枝ぶりに特徴があって千手観音のようだ。

 周辺には比較的大きな杉が、鹿よけの金網内も含め5本あり、シラヌタの池入り口にある東伊豆町設置の看板には「(林道側から見て)入り口に門番、奥に見張り番3人衆を従えている」と表記する。富永真弘さんは「雨が降るとお化け杉の近くまで幅1メートルほどの川になり、根のためには良くない。無指定だが、このままでは枯れる恐れもある」と指摘し、改善を求める。

 柵沿いを進むと右から馬の背、石楠立、万三郎岳(前峰)など雄大な天城の山並みが眼前に迫る。奈良本林道にぶつかったら右折し、この辺りから伊豆七島が見える。その先の林道三差路を右折する。「周辺にはケヤキに着生したヤドリギが多く、知人は『ヤドリギ平』と呼ぶことを提唱する」と富永さん。

 わずか先の片瀬川歩道の標識を入り、赤ペンキに注意して進む。涸沢を渡ったら左折、すぐ右折。その上流側に石を積んだ井戸があり、かつての森林管理署の作業小屋跡か?。シラヌタ大杉への遊歩道に出たら左へ。

 着いたら周囲を一周したい。威風堂々の存在感に圧倒される。林野庁などの「森の巨人たち100選」に選定され、看板の地図がどう見ても西伊豆方面を指していておかしい。奈良本林道に戻ったら林道を左折し、シラヌタの池の案内看板のある場所から下り、同池と巨木の森を見学し車へ戻った。

 ■ジオ解説=地滑りで誕生した池 かつては火口との見方も

 東伊豆町を流れる白田川の支流、川久保川上流にシラヌタの池は位置している。この池は天城火山の山腹にある窪地状の地形であることから、かつては火口であると考えられたこともあった。

 天城火山は本連載でも何度か登場しているが、約20万年前まで噴火を繰り返していた複成火山である。すでに噴火を終えた火山ではあるが、この火山の北―西斜面には火山特有のなだらかな斜面が残る。

 一方、南東側の特に白田川流域は、火山体の浸食が進み、深く切れ込んだ谷が険しい地形をつくっている。こうした浸食は川の流れそのものだけでなく、山腹の土砂がブロック状に滑り落ちる「地滑り」によっても進む。白田川流域には多数の地滑り地形が見られ、噴火を終えた火山がまさに解体されていく場所そのものなのである。

 1965年6月には白田川上流の平沢山で面積7ヘクタールにも及ぶ地滑りが発生し、約85万立方メートルもの土砂が堆積し、周辺のワサビ沢や水田に被害を及ぼした。多量の土砂がブロック状に移動する地滑りは、河川をせき止め天然ダムを形成することもある。天然ダムの決壊によって下流に大きな被害を出すこともあるので、地震時や大雨の際には注意が必要である。

 シラヌタの池もこうした地滑りによって形成されたものである。川久保川上流で発生した地滑りが河川をふさぐとともに対岸の斜面に乗り上げた。この時出口をふさがれた河川の一部が窪地となり、そこに水がたまり池となって残ったのだ。

 林道からシラヌタの池に向かう遊歩道は、この地滑りで動いた土塊の上を歩いていくことになる。川をふさいだ土砂の一部は再び浸食され川の流れは元に戻っている。この地滑りがいつ起こったものなのかは分かっていない。

(伊豆半島ジオパーク推進協議会専任研究員・鈴木雄介)

 【写説】樹齢千年以上と言われ、幹回りは9メートルあるシラヌタ大杉。威風堂々とし、伊豆最大級の老巨木だ

 【写説】幹回りは5・6メートルしかないが、枝ぶりが千手観音のように見えるお化け杉

 【写説】水面の真上に産み付けられたモリアオガエルの卵塊。3年前を底に徐々に増えているという

 【写説】シラヌタの池の奥にある巨木の森。ここに生えるスギは幹回りが7・35メートルあり、大きな木が林立する

 【写説】お化け杉の近くにはミツマタが多く自生し、春には美しい花を咲かせる(富永真弘さん提供)

 【図表】登山データ表

 【図表】登山ルート図

各地の最新の写真
伊東
お座敷ムード満喫 伊東旧見番が夕涼み舞台、あでやかな舞披露
下田
河津町長リコール本請求 住民投票10月8日投開票―住民組織
中伊豆
市長にオール伊豆初優勝報告 土肥ビーチボーイズ―伊豆
熱海
30人がMOAウオーク 県民の日、まち歩きガイドの会―熱海

最新写真特集

伊豆のひろば投稿
伊豆パワースポットめぐり
伊豆新聞とイズハピが贈る伊豆の観光情報紙 伊豆のとっておきの春時間を満載(PDF)