華の誇り(10)・第2章「地方」がいない(4)=長岡・伊東 未来見据え地方育成

2017年07月13日

伊豆の国市・伊豆長岡見番には多くの地方がいた頃の名残で何丁もの三味線が置かれ、出番の来る日を待っている
伊豆の国市・伊豆長岡見番には多くの地方がいた頃の名残で何丁もの三味線が置かれ、出番の来る日を待っている

 ■お座敷減少歯止めに懸命

 100年以上の歴史を誇る伊豆長岡見番は、お座敷の減少をくい止めようと懸命だ。今年5月に理事長に就任したむつみさんは切々と話す。「特に今は夏枯れの厳しい時期。地方[じかた]というより芸妓[げいぎ]がこれ以上減らないよう仕事を増やすことが先。仕事さえあればもっとお稽古もできる。私たちの努力が大事だけれど、行政などから師匠への月謝分なんかの支援があればね…」

好きでないと

 見番は、今年92歳になる三味線の名手・桃千代さんを擁する。桃千代さんに続く地方としてむつみさん、中堅どころの九美さんの名前が芸妓衆からは挙がった。三味線の難しさを知る2人は「とても桃千代さんのようにはできない」と自ら後継を名乗り出ることはないが、見番で稽古は重ねてきた。家でも稽古をいとわず、よほど好きでないと務まらないのが難しいところだ。桃千代さんに憧れ芸妓になった小鈴さんも三味線に興味を抱いている。

 目先の仕事を増やす努力と、地方育成などのスパンの長い努力。伊豆長岡見番はそのどちらもにらみつつ、未来を見据える必要に迫られている。

 ■伊東は一人も…

 伊豆長岡と同じく100年の歴史を背負う伊東旧見番は今月2日、伊東・東海館で自主公演「手習妓[てならいこ]の会」を開いた。会の中盤、前理事長で専務理事のえくぼさんこと横田宏恵さんがマイクを手にした。

 「ここからはテープでございます。旧見番には今、地方がおりませんので、こういうことでなんとか生き抜いて、その間に地方を育てたいと考えています」

 旧見番を含む2つの見番がある伊東花柳界には、地方が一人もいない。この日の舞台前半は生演奏の演目が続いた。長唄の師匠・松永鉄文智[てつふみとも]さんの三味線と、えくぼさんの粋な唄声で踊る艶の増した芸妓衆を、ひいき筋は温かく見守った。

 一時は解散の危機に陥った旧見番。今年に入り新理事長を迎え、ベテラン3人、若手4人の新体制での再出発を果たした。この日行われたお座敷遊び「投扇興」ではマイクを手に仕切り、客を遊ばせる由記さんら若手4人の堂々たる姿が見られた。

 ■芸妓が弾く三味線聴きたい

 「ベテランも若手も良かった。踊りも頑張ってるよ。あとはやっぱり地方がほしい。芸妓が弾く三味線を聴きたいねえ」。ひいき筋の一人が願うように、見番でも新体制を機に長唄と鳴り物のお稽古にも一層の力を入れたいと考えている。「三味線はすぐには育たない。5年、10年かかります。でも、やりますよ。若手もやる気でいます」。本格的な地方復活に向け、えくぼさんは力強く語る。

 師匠の鉄文智さんも期待を寄せる。「若手の一人、佑紀さんなんかは邦楽独特の声の出し方にところどころ光るものを感じます。さすがです。『三味線三年琴三月』という言葉があるくらい三味線は時間がかかる。でもね、時間をかければ皆さんできます」

 「地方がいなくなると花柳界は廃れる」。熱海花柳界のベテランが言っていた。この意味は、必死の思いで伝統を引き継ごうと踏みこたえる芸妓衆自身が身に染みて知っている。

 (本社・平田春日記者)

 地方(じかた)…踊り手の「立ち方」に対し、三味線や囃子など音楽を受け持つ人。この連載では特に三味線奏者を指します。

 【写説】伊豆の国市・伊豆長岡見番には多くの地方がいた頃の名残で何丁もの三味線が置かれ、出番の来る日を待っている

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