坦庵の漢詩を読む 44=処世知るよき資料(二松学舎大名誉教授・顧問、全日本漢詩連盟会長・石川忠久)

2017年05月08日

  偶 成

更無俗累妨閑情

堪歎二毛添数莖

常為居山無益友

纔因学剣得虚名

尤喜燕子候時至

偏愛葵花向日傾

慚愧青年傲豪客

微躯今日又何成

  偶  成

更に俗累の閑情を妨ぐる無く

歎[なげ]くに堪えたり 二毛数莖を添うるを

常に山に居るが為に益友無く

纔[わずか]かに剣を学ぶに因りて虚名を得

尤[もっと]も喜ぶ 燕子時を候[ま]ちて至るを

偏えに愛す 葵[き]花の日に向かって傾くを

慚愧す 青年豪を傲[おご]るの客

微躯今日又何をか成さん

     ◇……………………◇

(語釈)

俗累=世間のしがらみ。

閑情=静かな心。

二毛=白髪。

居山=田舎暮らし。

葵花=ひまわり。

慚愧=恥じ入るの意だが、ここでは羨ましい。

微躯=自分をへりくだって言う。

(訳)

 折にふれて

世にかかずらう わずらいを避け

ただ歎くのは 目につく白髪

山家[やまが]暮らしに 良き友も無く

剣術ばかり 評判が立つ

春が廻[めぐ]りて つばめは帰り

嬉[うれ]しいことに 向日葵[ひまわり]は咲く

血気盛んな 若者見れば

けちな此の身を 恥じ入るばかり

     ◇……………………◇

 七言律詩。押韻=情・莖・名・傾・成(平声庚韻)

 「偶成」とは、たまたま出来た、というほどの意。

 首聯[しゅれん](1・2句)静かな気持ちを妨げる累[わず]らはしさがない、ということと、白髪が数本まじった、という表現の仕方によって、まだ四十代の頃の作と推察される。

 頷聯[がんれん](3・4句)よい仲間がいないとか、剣術ばかりが評判を得ているとか、認められないのを不満げに言うようだ。

 頚聯[けいれん](5・6句)一転して、閑居を楽しむような口ぶりで、第1句の口調と応じ、

 尾聯[びれん](7・8句)謙遜しつつ、無為をかこつ調子で結ぶ。ことに第7句には、屈折した心が窺[うかが]われる。

 いずれにせよ、当時の事情を考え合わせ、坦庵の処世を知るよき資料となる作であろう。

(二松学舎大名誉教授・顧問、全日本漢詩連盟会長)

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