坦庵の漢詩を読む 40=上品な味わいの作品(二松学舎大名誉教授・顧問、全日本漢詩連盟会長・石川忠久)

2017年04月11日

春 雨

小雨無声催甲〓1

軽寒猶帯暁来風

露華香滴明窓外

花重薔薇満架紅

春 雨

小雨声無く 甲〓1[こうたく]を催す

軽寒猶[な]お帯ぶ 暁来の風

露華 香り滴[したた]る 明窓の外

花重き薔薇[しょうび] 満架紅[くれない]なり

(語釈)

甲〓1=草木が芽や花を開くこ   と。

露華=本来は「つゆのひかり」の意だが、ここでは「花のつゆ」の意に用いた。李白の詩に「春風檻[かん](欄干[らんかん])を払って露華濃[こまや]かなり」の句がある。

薔薇=バラ。

架=はち。または、はちを置く  棚。

(訳)

春雨

音もなく降る花開く雨

うすら寒さに暁の風

窓の外よりほのかな香り

架[たな]にこぼれる バラの紅

 七言絶句。押韻=風・紅(平声東韻、第1句踏み落とし)

 起句、音もなく降る春の雨が、しっとりと花々を湿[うる]おして、つぼみを開かせる。

 承句、明け方から吹く風は、春とは言え、まだ薄ら寒さを帯びている。

 転句、露に濡れた花の香りが、窓の外から匂ってくる。「明窓の外」、ということによって、自分は部屋の中にいることがわかる。

 結句、バラの花が露に濡[ぬ]れて、重たげに庭の棚いっぱいに咲いている。

     ◇……………………◇

山亭夏日     高駢

緑樹陰濃夏日衣

楼台倒影入池塘

水晶簾動微風起

一架薔薇満院香

緑樹陰濃やかにして夏日長く

楼台影を倒[さかし]まにして池塘に入る

水晶の簾動いて微風起こり

一架の薔薇 満院香[かんば]し

 この詩は、唐の高駢[こうべん]の「山亭夏日」(山の別荘での夏の日)と題する詩をヒントにしていると思われる。

 高駢の詩は、貴族の館の“夏の日”を描いたものだが、後半の圏点の部分、

 そよ風が吹いて、水晶の簾[すだれ]が動き、

 架一ぱいのバラが、庭じゅうに薫った、

とあるのを、たくみに翻案して“春の朝”に仕立て替えたもの。上品な味わいに、通うものがあるようだ。(左の詩参照)

(二松学舎大名誉教授・顧問、全日本漢詩連盟会長)

 ※〓1は土ヘンに斥

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