坦庵の漢詩を読む 39=景色楽しみ遠出(二松学舎大名誉教授・顧問、全日本漢詩連盟会長・石川忠久)

2017年04月03日

 赴江梨途中作 其の二

痩馬孤吟落日辺

軽寒軽暖与相牽

雲山含雨朦朧遠

野水浮花宛転旋

払岸新楊垂緑線

護田春草舗紅氈

風光満眼知多少

好是清明前後天

痩馬孤吟 落日の辺

軽寒軽暖 与[とも]に相い牽[ひ]く

雲山雨を含んで 朦朧[もうろう]として遠く

野水花を浮かべて 宛転[えんてん]として旋[めぐ]る

岸を払う新楊 緑線を垂れ

田を護る春草 紅氈[こうせん]を舗[し]く

風光満眼 知んぬ多少ぞ

好し是れ 清明前後の天

     ◇……………………◇

(語釈)

朦朧=ぼんやり見えるさま。

宛転=くねくね曲がるさま。

緑線=緑の糸。

紅氈=赤い毛。

知多少=どれほどか(多い、の意)

清明=二十四節気の一。4月10日ごろ。

(訳)

夕日の路を痩せ馬で行く

寒さ暑さもほどよい季節

雨を含むか遠い山並み

花を浮かべて小川は流る

岸辺の柳緑[あお]い糸垂れ

畦[あぜ]道の花赤い毛氈[もうせん]

見渡すかぎり光あふれて

清明の節爛漫[らんまん]の春

     ◇……………………◇

 七言律詩。押韻(辺・牽・旋・氈・天=平声先韻)

 「其の一」に続き、夕暮れ時の情景を詠う。韮山から江梨までは、馬でおよそ一日行程なのだろう。春爛漫の好時節、馬に揺られて、のんびり景色を楽しみながらの遠出を楽しむ。

 [首聯[しゅれん](1・2句)]寒さ暖かさ、程よい気候の日暮れ時、のんびり馬にまたがり、詩を口ずさみながら行く。

 [頷聯[がんれん](3・4句)]対句。雨もようの雲(上)のかかる山(遠)、花びらを浮かべる野の川(下)は、すぐそばをくねって流れる(近)。

 [頚聯[けいれん](5・6句)]対句。柳と草(植物)、緑と紅(色)の組み合わせ。なお、「護田」の語は、宋の王安石の名詩に用例のある語で、機知が光る。

 [尾聯[びれん](7・8句)]春真っ盛りの風景を堪能して結ぶ。「知多少」の語は、唐の孟浩然の「春暁」に、「花落知多少」(花落つること知んぬ多少ぞ)とあり、甚だ有名。これをうまく借用した。

(二松学舎大名誉教授・顧問、全日本漢詩連盟会長)

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