坦庵の漢詩を読む 34=奇抜な発想に脱帽(二松学舎大名誉教授・顧問、全日本漢詩連盟会長・石川忠久)

2017年03月04日

 梅 其二

花冷於氷幹堅鉄

正知高格冠群芳

十分孤痩能堪雪

一片清香恣傲霜

廨宇景風動詩興

羅浮山月断人腸

樽前却笑淵明賦

空眄庭柯得意長

 梅の花 其の2

花は氷より冷やかに 幹は鉄より堅し

正に知る 高格群芳に冠たるを

十分の孤痩[こそう] 能[よ]く雪に堪え

一片の清香 恣[ほしい]ままに霜に傲[おご]る

廨宇[かいう]の景風 詩興を動かし

羅浮[らふ]の山月 人腸を断つ

樽前却って笑う 淵明[えんめい]の賦

空しく庭柯[か]を眄[み]て得意長し

     ◇……………………◇

(語釈)

高格=高い風格。

群芳=もろもろの花。

廨宇=役所。

景風=日の光と風。

羅浮山=中国の南にある山。

    梅の名所(解説参照)。

淵明=晋の詩人陶淵明[とうえんめい]。

庭柯=庭の木の枝(尾聯[びれん]の説明   参照)。

     ◇……………………◇

(訳)

花は氷か幹はくろがね

花々凌ぐ高い風格

痩せた枝ぶりよく雪に耐え

清らな香り霜にもめげぬ

役所の庭に詩心そそり

夢の出会いに人を悩ます

おかしいことよ彼[か]の陶淵明

松を眺めて得意顔とは

 七言律詩。押韻=芳・霜・腸・長(第1句踏み落とし、平声陽韻)

 首聯[しゅれん](1・2句)、梅は花が白く清らか、幹はゴツゴツして、いかにも気高い様子、他の花々の上にある(冠)。

 頷聯[がんれん](3・4句)。対句。ただし、「孤痩」(孤独で痩せている)は、聞かない語で、次の句の「清香」(清らかな香り)とは、対の具合がよくない。

 頸聯[けいれん](5・6句)、対句。ただし、「廨宇景風」の語は見かけない表現で、「羅浮山月」と対にならない。

 尾聯(7・8句)は、陶淵明の有名な文「帰去来辞[ききょらいのじ]」に、淵明が役人を辞めて帰って来た時、酒を飲みながら庭の木(庭柯)を眺めて、思わずニコニコする、と詠っているのを踏まえ、こっちは梅を眺めているんだぞ、と淵明を笑いとばしている。対句に難点はあるが、最後の2句の奇抜な発想には脱帽だ。

(解説)

 羅浮山は、中国の南(広東省)にある山。梅の名所。昔、ある男が山の麓で酔って眠っている間に、美女と出会って楽しく遊んだが、目が覚めると美女は消え、大きな梅の木の下にいたと。「羅浮の夢」として、よく詩にも詠われる。

(二松学舎大名誉教授・顧問、全日本漢詩連盟会長)

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