伊豆の自然誌 海の生き物 96=海洋酸性化 影響甚大、生態系の劇的変化を予想(筑波大下田臨海実験センター・和田茂樹)

2016年06月26日

高濃度のCO2が噴出する海域、CO2シープ
高濃度のCO2が噴出する海域、CO2シープ
シープから近いエリア。マット状の海藻などが多く見られる
シープから近いエリア。マット状の海藻などが多く見られる
シープから離れたエリア。大型のサンゴなども観察される。
シープから離れたエリア。大型のサンゴなども観察される。

 人が出す二酸化炭素(CO2)が地球の環境を大きく変化させていることについて、多くの人が注目するようになってきました。その中で、CO2の持つ温室効果が地球を暖かくしていること(地球温暖化)は、おそらくほとんどの人がご存じではないでしょうか。

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 地球温暖化の進行は、海の存在によって緩やかになっています。これは、大気から海へCO2が溶け込んでいるためです。しかし、海へ溶け込んだCO2がもう一つの問題である「海洋酸性化」を引き起こしていることが、近年になって明らかとなってきました。

 海にCO2が溶け込むと、海水の化学的なバランスが変化し、pH(ピーエイチ=水素イオン指数)が低下(酸性化)します。海洋酸性化は地球温暖化と同時に進行するため、地球温暖化の“邪悪な双子”とも呼ばれており、海の生物、環境に関わる研究者たちは大きな懸念を抱いています。

 現在の海水のpHは約8・1ですが、産業革命以前は約8・2でした。つまり、現在までに人類が放出したCO2によって、既に海水のpHは0・1下がっています。さらに、100~150年後には0・3~0・5程度下がると予測されています。

 海水のpHの低下が海の生物に及ぼす影響は甚大で、特にサンゴや貝など石灰質の構造物を作り出す生物は、その骨格や殻を作ることが難しくなり、生存が危ぶまれています。

 酸性化の影響を調べるため、多くの研究者がpHを下げた海水に生物を入れて実験をしています。この実験はとても重要ですが、問題もはらんでいます。例えば実験室下での試験は、飼育が可能な生物に限られますが、実際の海の中には飼育の困難な生物が数多く存在しています。そのため、未来の海で何が起こるのか、飼育実験で全てを予測することはできません。

 そこで、筑波大下田臨海実験センターは、もう一つの酸性化研究のアプローチとして、CO2シープと呼ばれる海域に注目しています。CO2シープとは海底から高濃度のCO2が噴出する海域です。噴出エリアの近くでは、CO2が海水に溶け込んで酸性化しており、生態系が丸ごと酸性化されているため、そこに生息する生物全てを研究対象にすることができるのです。

 CO2シープの近くでは、サンゴの減少や海藻の種類・量の変化などが観察されており、将来、生態系が劇的に変化することが予想されます。われわれは、こういった結果をもとに海の将来を予想し、その変化に素早く対応していくことがこれから必要となってくるでしょう。(筑波大下田臨海実験センター・和田茂樹)

 【写説】高濃度のCO2が噴出する海域、CO2シープ

 【写説】シープから近いエリア。マット状の海藻などが多く見られる

 【写説】シープから離れたエリア。大型のサンゴなども観察される。

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