伊豆の自然誌 海の生き物 91=成体と全く違う姿で生息域拡大か 海産無脊椎動物の幼生(筑波大下田臨海実験センター・中野裕

2016年05月22日

ウニのプルテウス幼生(筑波大下田臨海実験センター・谷口俊介准教授提供)
ウニのプルテウス幼生(筑波大下田臨海実験センター・谷口俊介准教授提供)
下田で採取されたカニの幼生(広島大・若林香織助教提供)
下田で採取されたカニの幼生(広島大・若林香織助教提供)

 海にすんでいる背骨のない動物、海産無脊椎動物を挙げてください、と言われたらどんな動物を思い浮かべるでしょうか。伊豆の特産品でもある伊勢エビやサザエ、寿司[すし]のネタになるウニやシャコ、酒のつまみにもなるナマコやホヤなど、食べられるものはなじみがあるかもしれません。

 また、磯で遊んでいる際に目にするカニ、ヤドカリ、ヒトデ、アメフラシなども名前が挙がるでしょう。このように海にはいろいろな海産無脊椎動物がすんでいますが、実はここに挙げた動物には一つ共通点があります。これら全ての動物は子ども(幼生)と大人(成体)で大きく体の形が異なるのです。

 その中でも特に有名なのは高校の教科書にも載っているウニでしょうか。ウニのプルテウス幼生(ウニの発生初期、胚から成体に至る中間時期)はとても小さく透明で、海の中を何週間も泳ぎ回ります。そして、時期が来ると変態してウニの姿に変わります。変態の際には幼生の体のほとんどを捨てて、体の中の一部分からウニの体を新たに作り上げます。

 幼生が海の中を泳ぎ回る期間や、変態の際の成体の器官のでき方などは種によって違いはありますが、多くの海産無脊椎動物では以下の3点が共通しています。(1)幼生は成体と比べ非常に小さい(2)幼生は海の中を泳ぎ回り、成体は海底をはい回る(3)幼生から成体に変わる過程で変態という劇的な変化が起きる。

 では、なぜこのように面倒な成長過程をとるのでしょうか。今でもその理由はよく分かっていません。有力な説としては、生息域の拡大が考えられています。上に名前が出ているウニやアメフラシなど、海産無脊椎動物の多くは成体になると主に海底をはい回って移動するようになるため、海水中を活発に泳ぎ回ったり海流に流されたりして遠く離れた場所に行くということがほとんどなくなります。

 もし、これらの動物の子どもも、海底をはい回るような姿で生まれたら、親の生息する場所から遠くへ移動することができず、親と同じ場所でずっと暮らすことになります。すると、餌や隠れ場所などを成体と争いながら生き延びていかないとなりません。また、もし生息している場所の環境が急に大きく変化して、その動物にとってすめない状況になってしまった場合、その種が絶滅してしまう可能性もあります。

 このような成体との争いや絶滅を避けるために、成体から遠く離れた場所にも行けるように、幼生が進化してきたと考えられているのです。人間だけでなく、海産無脊椎動物にとっても、かわいい子には旅をさせるのがいいのかもしれません。

(筑波大下田臨海実験センター・中野裕昭)

 【写説】ウニのプルテウス幼生(筑波大下田臨海実験センター・谷口俊介准教授提供)

 【写説】下田で採取されたカニの幼生(広島大・若林香織助教提供)

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