伊豆の自然誌 海の生き物 86=表層のエネルギーとCO2深海へ運ぶ マリンスノー(筑波大下田臨海実験センター・和田茂樹)

2016年04月19日

水深100メートル付近でライトを照らした時
水深100メートル付近でライトを照らした時
マリンスノーを特殊な試薬で青く染めたもの
マリンスノーを特殊な試薬で青く染めたもの

 マリンスノー―直訳すると「海の雪」という言葉から、不思議な響きを感じる方も多いでしょう。海の中にはたくさんの粒子があり、ふわふわと漂うものもあれば高速で沈んでいくものもあります。光があまり届かない深い海でライトを照らすと、これらの粒子が降りそそぐ様が、雪のように見えるのです。実はマリンスノーの名付け親は日本人です。

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 60年ほど前、北海道大の研究者が潜水調査船に乗った際に、海の中の粒子がライトで白く光ったことから名付けられました。このように古くから知られているマリンスノーですが、その元をたどると、海の植物プランクトンが光合成によって作り出した有機物を多く含みます。植物プランクトンが直接作り出した有機物もあれば、他の生物に利用されて変成したものなどもあります。

 現在の地球の環境では、光合成は生物が利用できるエネルギー源を作り出す、最も重要なプロセスと考えられています。しかし、海の深い所では届く光が弱すぎて光合成を十分に行うことができません。一般的に光合成が行われる深度は、深くても200メートルぐらいといわれています。

 そうなると、もっと深い所で生きている生き物はどのようにエネルギーを得ているのか、という疑問が湧いてきます。ここでマリンスノーが一つの重要な役割を担っているのです。光合成で作られた有機物がマリンスノーとなって沈んでいき、深海の生物はそれを餌として生活しているものが多くいます。

 表層で作られた有機物が深海に沈んでいくという現象は、深海の生物にエネルギーを供給する以外にも、重要な役割を持っています。先に述べた通り、表層の植物プランクトンが、光合成で二酸化炭素から有機物を作り出し、その一部がマリンスノーとなって深海に沈んでいくわけですが、このプロセスは表層の二酸化炭素を、深海へ隔離して減らす働きを持ちます。

 海の表層の二酸化炭素が減ると、大気から海へ二酸化炭素が吸収されるため、最終的に地球温暖化の原因として知られる、大気中の二酸化炭素が海に隔離されることになるのです。このような、マリンスノーを介した二酸化炭素の吸収、隔離機能は「生物ポンプ」と呼ばれており、仮に地球上に生物ポンプがなかったら、大気中の二酸化炭素は現在の数倍の値になっただろうといわれています。

 海の中の小さなプランクトンが作り出すマリンスノーが、海の生態系や地球の環境に大きな影響を与えているのです。

(筑波大下田臨海実験センター・和田茂樹)

 【写説】水深100メートル付近でライトを照らした時

 【写説】マリンスノーを特殊な試薬で青く染めたもの

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