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伊豆路=自然や歴史に学んで暮らす(伊豆半島ジオパーク推進協議会事務局専任研究員・鈴木雄介)

伊東版 2013年03月24日 

 伊豆半島では、南の海で生まれ本州に衝突し、現在も活動を続ける大地に育まれた美しい景観や温泉、歴史文化を楽しむことができる。一方で、こうした自然の営みは、時に人々に牙をむき、被害をもたらす自然災害の原因にもなる。

 身近に起こりうる自然災害について知ることは楽しいことではない。しかし、自然の災いと恵みは表裏の関係であり、大地がつくり出した風景を読み解くことは、伊豆の災害履歴や将来のリスクと、災害によってもたらされ私たちの生活を支えている恩恵の両方を知ることにほかならない。

 伊豆高原のなだらかな台地は大室山の噴火がつくり出したものであるし、各地の温泉も火山の恵みである。亀裂やすき間の多い火山は、多くの地下水を貯め、湧水も供給している。また、プレートの沈み込みによってつくられた深い海は、伊豆半島の東西に広がり、豊かな海産資源を提供している。美しく恵み多い自然は、災害の語り部でもある。

 私たちに災害の記憶を語りかけてくるのは自然だけではない。伊豆の各地には、過去の自然災害を今に伝える先人たちの知恵が残されている。

 伊東市川奈の海蔵寺には、境内にあがる石段に関東大震災(1923年)の津波が到達した地点を示す小さな碑が建っている。伊東市街の各地にも、関東大震災だけでなく、元禄地震(1703年)による津波の到達碑が残されており、松川を遡上した津波が、現在の南伊東駅付近まで達したことを示している。

 シミュレーションによる津波想定も重要な情報であるが、自然の風景や石碑など、身近な場所に残された「災害の記憶」を知り、過去から学ぶことも大切なことである。

 自然景観から災害を理解することは、これまでは専門家だけのものだったかもしれない。ジオパークの取り組みを通じて、地球活動の雄大さ美しさ、その恵みを見直すだけでなく、地域に溶け込んだ防災意識を醸成していくことができれば幸いである。

 (伊東市、伊豆半島ジオパーク推進協議会事務局専任研究員)

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