1面コラム 潮の響=井上靖と映画

2019年01月29日

 養蜂家の生活を通してミツバチの生態などを描いた吉村昭の小説「蜜蜂乱舞」は絶版だったが、ネット通販で入手した。蜜収穫の労苦を知り、以来ありがたく味わっている

 ▼絶版といえば伊豆市湯ケ島地区ゆかりの井上靖の小説「星と祭」が入手困難な状況にあり、舞台となった滋賀県長浜市の有志が復刊プロジェクト実行委員会を立ち上げた。琵琶湖北の十一面観音が知られるようになった作品という

 ▼先日、井上靖文学館(長泉町)で開館45年記念展「井上靖と映画―銀幕を彩った作品たち」(~3月19日)を見てきた。映画化された作品資料や、京都帝国大在籍時に新興キネマ社の脚本部に務めた井上がシナリオに関わった「白銀の王座」(1935年、内田吐夢監督)の脚本やロケ写真などを初公開している。「井上靖研究」(研究会発行)第17号にその脚本などが掲載され興味深く読んだ

 ▼文学館の原作映画化年表を数えると、「流転」(37年公開)から「死と恋と波と」(2015年公開)まで43作もあった

 ▼長泉町からの帰路に、井上が「伊豆で私の最も好きなものの一つ」という天城の稜線[りょうせん]へかかる雲が視界に入った。きょうは井上の命日だ。井上文学は“伊豆の財産”と再認識したい。

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