1面コラム 潮の響=不易流行

2019年01月08日

 満ちた月でなくても、相模灘の穏やかな海面には月の道が出現する。そんな光景を眺めながら、早朝に車を走らせた。向かったのは熱海市下多賀にある小さなお堂だ

 ▼JR伊東線の線路脇に建つ小山毘沙門堂では正月3日の日の出前に、1時間だけ毘沙門天像がご開帳される。かつて修復した際に棟札が見つかり「運慶の作、疑うことなかれ」といった旨が記されていたと、堂守の柳下キクエさん(98)から聞いた

 ▼読経が始まり、御簾[みす]がゆっくりと上げられると、像に目を凝らした。顔は御簾の影になり、お堂の外から拝むことはできなかったが、たたずまいから威厳のようなものが伝わってきた

 ▼古くから大漁祈願の神として網代の漁師の信仰を集め、今は奉賛会と地元町内会が大事に守る。今年も粛々と運営に当たる住民の姿を目にした。地域の宝を受け継ぎ、守る人たちの存在を心強く思うとともに、観光の町・熱海の日常とは違う一面に触れた気分になった

 ▼宿泊客数がV字回復し、注目を集める熱海にも、地に足をつけた人々の暮らしがある。5月には改元され、新たな時代を迎える。毘沙門天像に手を合わせながら、変化の時も不易流行を心に留め、地域のニュースを届けたいと思った。

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