1面コラム 潮の響=女優の「覚悟」

2018年10月23日

 「年をとったからって自動的に成熟するなんて、とんでもない誤解だ。正邪、美醜、それを兼ねて人は人なんだ、特に役者は」(KAWADE夢ムック 文芸別冊・是枝裕和)。9月に75歳で死去した女優・樹木希林さんの言葉だ

 ▼同月、下田市出身でタイを拠点に活動する女優・土屋春菜さんが下田と東京で公演した。公演には行けなかったが、下田市民文化会館での最終リハーサルに立ち会えた。筆者が舞台に立つ土屋さんを見たのは2006年の下田公演以来だった

 ▼今公演は土屋さん自身が脚本を書き、舞台演出を手掛けた「ジュリエット」の一人芝居。本番さながらの最終リハは、舞台に立った瞬間から役に入り込む集中力や喜怒哀楽の繊細な演技、全身を使った激しいパフォーマンス、演出などに引き込まれた

 ▼土屋さんは昨年、伊豆新聞に寄稿し「将来に怯[おび]えていた大学生の私」から「プロのアーティストへの私」への橋を渡った―とつづっていた。最終リハの熱情に寄稿時の心境と、女優としての「覚悟」が伝わり、樹木希林さんの言葉とオーバーラップした

 ▼土屋さんは次の舞台に向け動き出したようだ。彼女がどのような作品に出合い、女優(=役者)人生を歩むのか楽しみだ。

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