1面コラム 潮の響=非日常と日常が混在する熱海

2018年05月08日

 華やかな衣装を身にまとった芸妓[げいぎ]衆のしなやかで繊細な動きの美しさに、何度もため息が漏れた。錦絵や日本画の世界が動き出したような光景に、時間も空間もワープしたような感覚を覚えた

 ▼熱海温泉の芸妓衆が日頃の修練の成果を披露する「熱海をどり」がこのほど、2日間にわたり熱海芸妓見番歌舞練場で催された。あでやかな踊りを鑑賞しながら、「非日常が日常化している」というフレーズが脳裏に浮かんだ

 ▼熱海市内に住む中尾千恵子(筆名・ちゑこ)さんが、小説「熱海残照」(第20回伊豆文学賞最優秀賞作)の中で熱海を表現した。非日常の演出に、大きな役割を果たす芸妓衆だが、華やかな舞台も日常の修練があってこそ創り上げられる

 ▼熱海をどり開幕前に稽古を見る機会を得た。手足の動きや視線まで、細かに確認する真剣な表情が印象的で、西川千鶴子・熱海芸妓置屋連合組合長の「芸妓衆は働きながら、日々稽古に励んでいる。熱海のために頑張っている」という言葉にうなずけた

 ▼終演後、見番の外に出ると、買い物客が行き交う日常風景が広がっていた。見番の近くにはスーパーや商店が並び、非日常と日常が混在する。それもまた熱海の街の魅力なのだと思った。

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