1面コラム 潮の響=164年前の踏海の企て

2018年04月21日

 幕末の思想家吉田松陰は、幽閉中に叔父が主宰していた松下村塾を引き継ぎ、後の明治維新の立役者となった多くの若者たちに思想的な影響を与えた。下田での黒船密航未遂事件がなかったら、あるいは成功して渡米していたら、歴史は変わっていたかもしれない

 ▼その密航未遂事件は、ちょうど164年前の今ごろの季節だった。西暦で記録をたどると、松陰は一つ年下の金子重輔とともに東浦路を駆け、4月15日に下田に到着した。24日に黒船密航を企て失敗。5月7日に唐丸籠で江戸送りとなった

 ▼この間、数々の足跡を残している。温泉で皮膚病を癒やしながら機会をうかがっていた蓮台寺の村山邸は、今も県指定史跡として残る。管理人が丁寧に案内し、松陰が読んだ詩歌の栞[しおり]をプレゼントしている

 ▼ペリーロードの一角に建つ土佐屋にも立ち寄った。当家の縁者が松陰の兄にあたる杉家に奉公していた縁で、江戸の兄の元へ届けてもらおうと日記や手紙などを託した。土佐屋は、安政の大地震でも骨組みが残り、現在なまこ壁のソウルバーとして営業している

 ▼当時25歳と24歳の若者の目に、下田の景色はどのように映ったのだろうか。同じ新緑の季節に足跡を巡るのは感慨深い。

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