1面コラム 潮の響=もう一つの慰霊碑

2018年04月10日

 丹那トンネルの工事に携わった川瀬亀蔵さんは1938年に亡くなるまで、特別の感慨をもって4月を迎えていたという。東口(熱海口)の施工業者の社員で、専属下請け「川瀬組」を率いた

 ▼着工から3年目の21年4月1日、東口工事現場で大崩落事故が発生した。犠牲者16人のうち13人が配下の作業員で「尊い犠牲者のことは永遠にたたえられるべきで、子々孫々まで祭り続ける」といった発言が伝わる

 ▼先日、殉職碑前で開かれた40回目の感謝祭に、ひ孫の川瀬康敬さんがメッセージを寄せてエピソードを紹介した。西口の施工業者の所長が開通時に語った「尊き殉職者に対して僕は死ぬまで冥福を祈るばかり」という言葉を取り上げる来賓もいた

 ▼開通により熱海は観光の町として飛躍的に発展した。その“陰”に多くの尽力と犠牲があったことを改めて胸に刻みつつ、もう一つの慰霊碑のことを思った。JR伊東線・新小山トンネルそばの山中に建つ伊東線工事殉職者の霊魂碑で、存在は地元でも知られていない

 ▼伊東線は「丹那以上の難工事」とも言われ、碑には12人の名が刻まれている。今年は丹那トンネル着工100年、そして伊東線全通80年の節目。埋もれた歴史にも光を当てたい。

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