1面コラム 潮の響=新たな春に

2018年03月20日

 先日、伊豆のある酒場のカウンターで飲んでいた時のこと。閉店時間が迫った頃、店主の友人の男性が来店し隣で飲み始めた

 ▼店主に紹介され、男性と3人での会話になった。しばらくして男性が「この春、息子が家を出て行くんです。ずっと一緒に生活してきたので(その時が)想像できないんです」と打ち明けた。筆者の子どもが東京で働いていることを伝えると「どんな気持ちなんですか」と聞かれた。「寂しくなるし、子どもが家にいないことが不思議な感じになる時がある」と正直に答えたが、男性はどう受け止めただろうか

 ▼帰り道、子どもと過ごした日々を思い浮かべていた。もっと一緒に出掛けたかったこと、アドバイスできることはなかったか―などと少しばかり後悔した

 ▼きょうで没後20年になる随筆家・イタリア文学者の須賀敦子さんに「ほめる」というエッセーがある。2年滞在したフランスでフランス語がものにならなかったのに、イタリア語は2カ月の滞在で日常に不自由ない程度あやつれるようになったのは「ほめられたからではないか」というのだ

 ▼まもなく新たな春が始まる。子どもたちが何かを達成したら、たくさん褒めてあげませんか。自戒を込めて。

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