1面コラム 潮の響=地域で育てる「身上起」

2018年01月09日

 「山田錦」「五百万石」「美山錦」「雄町」「出羽燦々[さんさん]」…。全国の酒蔵で使われている主な酒米だ。静岡には「誉富士」がある

 ▼南伊豆町商工会が開発した純米吟醸酒「古里凱旋[ふるさとがいせん]・身上起[しんしょうおこし]」の酒米は「愛国米」だ。昨年末、新酒試飲会で無ろ過生原酒や海水熟成酒などをサンマずしや干物の素揚げ、刺し身などをつまみ飲み比べた。地元の方のもてなしもあって杯が進んだ

 ▼飲食店の人は「固定ファンが増えた」と実感を語る。世界最高峰のワイン品評会で銅賞を得ただけあり、特にアジア圏からの注目が高まったと聞く。関係者によれば、取り扱いを増やしている宿泊施設は送迎バスの車内で「地元の酒」と紹介しているそうだ

 ▼愛国米の元となる品種をつくった明治の農家・高橋安兵衛記念碑の建立募金が始まった。安兵衛は既存の晩生種「身上起」から「身上早生」を選抜し、青市中組で栽培した。米は後に宮城県に渡り愛国米として広がり、コシヒカリや山田錦のルーツになったという

 ▼南伊豆の人が「全国に誇れる」と語る愛国米で醸した身上起は、旅行客も魅力を感じるはず。伊豆の山海の幸に“物語”を添えて提供できる地酒は貴重だ。地域で支え育てたい。酒造りは人づくりでもあろう。

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