1面コラム 潮の響=山の熱海・海の熱海

2017年10月31日

 埼玉県から訪れた夫婦が「熱海まで車で迎えに来て」と息子に頼んだものの、何時間待っても到着しない。電話をすると、息子は伊豆の熱海に向かっていた―。“山の熱海”の磐梯熱海温泉(福島県郡山市)で駅前の足湯に漬かっていると、地元の男性が以前出会ったという夫婦のエピソードを教えてくれた。気さくな方言での語りが耳に心地よかった

 ▼同温泉をお座敷列車で訪ねる熱海市観光協会主催の「復興支援と友好の旅」がJRの架線トラブルの影響で中止、と連絡を受けたのは旅支度を終えた出発前夜。旅を諦めきれず、車で出掛けた

 ▼磐梯熱海温泉は、源頼朝の奥州征伐後に領主となった工藤祐経の次男伊東祐長が、郷土の伊豆をしのんで名付けたとされる。地名が縁で“海の熱海”と観光協会が姉妹提携を結んでいる

 ▼途中、祐長が伊豆山、箱根、三嶋の三社を合祀[ごうし]したと伝わる「王宮伊豆神社」に足を延ばした。鳥居脇の社名標に、熱海・伊豆山神社の宮司名が刻まれているのを見つけた。平成の世になった記念に建てられ、当時の宮司が揮毫[きごう]したものだった

 ▼歴史や文化、人物など、旅先で郷土とのつながりを知ると、その土地がぐっと身近になる。郷土を学び、縁を訪ねる旅をまた楽しみたい。

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