1面コラム 潮の響=「関ケ原」きょう公開

2017年08月26日

 幼名を「佐吉」といった。鷹狩りの際、喉が渇いた秀吉は、ある寺へ駆け込み茶を求めた。応対した少年は温めの茶を大きな茶碗に入れて出した。「さらに一ぷく」求められ、今度は湯をやや熱くし、量を半分ぐらいにした

 ▼3杯目を求められた少年は、舌の焼けるほど熱い茶を、小さな茶碗に少しだけ入れて出した。「この児よし」と、秀吉は佐吉をもらい受けた。天下分け目の関ケ原で西軍を率いた石田三成の有名な逸話である

 ▼この希代の秘書官は行政手腕に優れていたが、政治力に欠けていた。正義心が強い余り「へいくゎい(横柄な)者」とそしられ、敵も多かった。五奉行の筆頭とはいえ、255万石の大大名で百戦錬磨の徳川家康に対抗すべくもなかった。が、関ケ原では東軍に拮[きっ]抗[こう]する勢力を集めた

 ▼明治時代に陸軍大学校の教官を務めたドイツのメッケル少佐は、両軍の布陣図を見て「西軍の勝ち」と断言した。調略や裏切りがあったことを知り、納得したという。その過程を、司馬遼太郎は小説「関ケ原」で見事に描いた

 ▼この不朽の名作を沼津市出身で伊豆に関わりが深い原田真人監督が脚本も手掛けて映画化した。きょうから全国で公開される。映画は原作を超えられるか、楽しみだ。

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