1面コラム 潮の響=魚の目は泪

2017年08月22日

 伊豆に住んでいると当たり前に思えても、都会人にすればそうではないことが時折ある。食卓に並べたキンメダイの煮付けや刺し身の写真を会員制交流サイト(SNS)にアップしたら、東京の友人が「ぜいたく過ぎる」と書き込んできた

 ▼伊豆近海の魚を知りたいときは、園部雨汀さん著「伊豆の魚たち」(伊豆新聞本社発行)を手にする。夏の項目に「ちかめきんとき」がある。たくさん釣れる時が10年か20年の周期で一度巡って来るため、「ごっそり」の別名があるそうだ

 ▼雨汀さんの句「油照り金時の目にみつめらる」から、作家・向田邦子さんのエッセーを連想した。料理を得意とした向田さんだったが、苦手なこともあったようだ

 ▼「父の詑び状」(文春文庫)の一編「魚の目は泪[なみだ]」にある。絵を添える随筆を依頼され、買ってきたアジなどを描くのだが、形はどうにかなるのに、「目に表情があり過ぎる」「どう描いても、女の目である」などとつづっている

 ▼後に、その絵を別の本に見つけた。スケッチブックに描かれた魚たちは、確かに女性の目ばかりに見える。きょうは、向田さんの命日だ。向田さんだったら伊豆の魚をどう料理するだろうかと、かなわぬことを想像する。

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