1面コラム 潮の響=「鳥雲に入る」

2017年04月25日

 ススキが広がる高原を歩きながら、さえずりの方向を見上げると、鳥が輪を描くように飛びながら高度を上げ、肉眼で確認できないほど小さくなった。一緒にいた友人が「さすが“先生”だな」と言った

 ▼30年近く前、友人の勧めでパラグライダーを始めた頃のこと。仲間は親しみを込めトビを“先生”と呼んでいた。上昇気流を捉えて本能で飛ぶ姿は、お手本だった。翼を広げたまま風に乗って飛ぶのを帆翔というと後に知った

 ▼梨木香歩さん著「渡りの足跡」(新潮文庫)を読み始め、知床で出合ったオオワシが渡りをする際、上昇して進路を取る描写から、トビの飛翔を連想した。命掛けで羽ばたき、長距離を渡る鳥たちに寄り添う著者の視点が興味深い

 ▼3月末、国の特別天然記念物アホウドリ1羽が、下田市の須崎港で一時的に保護されたと本紙記事にあった。利島沖で操業していたキンメダイ漁船の針に引っかかった若鳥らしく、針を外して放たれると南方に去ったそうだ。無事目的地に着いたか気になる

 ▼渡りの際、太陽や星座の位置が大きな役割を担っているという。人間は野性的な本能を失い、豊かな自然を失っていくばかりではないだろうか。「鳥雲に入る」季節に思考する。

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