1面コラム 潮の響=情感たっぷりに漱石の世界

2017年03月05日

 毎日、記事など文章に向き合う仕事をしているが、学生時代は文学とは無縁だった。そんな中、唯一親しんだのが夏目漱石。高校生の時、現代国語の教科書に一部が載っていた「こゝろ」を、先生から買って読むよう“強制”されたのがきっかけだ

 ▼「こゝろ」は1914(大正3)年、朝日新聞に連載された小説で、10(明治43)年「修善寺の大患」後に書かれた漱石の代表作。それまで「坊っちゃん」や「吾輩は猫である」しか知らなかったが、「こゝろ」で漱石文学の神髄にふれ、一気にファンになった

 ▼過日、伊豆市の修禅寺で開かれた「伊豆文学まつり」のイベント「修善寺温泉文学サロン」に参加した。伊豆の国市に住む女優大塚良重さんが、漱石「夢十夜」のひとり語りを行った

 ▼「こんな夢を見た」で始まる10の物語のうち「第三夜」「第六夜」「第九夜」を、大塚さんは約30分間にわたり情感たっぷりに“演じた”。目を閉じると漱石が描いた夢の情景が鮮やかに広がった

 ▼修善寺は漱石「大患の地」として知られているが、その後に人生観が変わり数々の名作を書き上げたという。地元漱石会の原京会長は「修善寺を大文豪を生んだ地、再生の地にしたい」と語った。全く同感だ。

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